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下手くそに整えられたベッドでシエルは寝付けずに居た。
窓をチラリと見遣っては、深く溜息をつく。
「……今夜も帰って来ないか…。」
もしかしたら、もう――…。
シエルは首を振って浮かび上がったセバスチャンの姿を振り切った。
だが、どうしても血の海に横たわるセバスチャンの姿が脳裏に浮かぶ。
シエルは、ふと目の前が滲み、温かい水滴が目尻を伝うのを感じた。
「な…?」
シエルの目からは涙が零れていた。
その後もとめどなく溢れ出す。
何を泣いているんだ、僕は。
奴は"セバスチャン"だぞ?
セバスチャンが僕から離れる事が出来るはずがない。
ごしごしと涙を擦った。
だが後から後から涙は流れる。
自分はいつからこんなにセバスチャンを必要としていたのだろう。
いつしかセバスチャンが隣にいることが当たり前になっていたから気付けなかった。
シエルはしゃくり上げそうになる声を抑えた。
我慢すれば我慢するほど胸が苦しくてしかたない。
喉元までせりあがってきた声をを飲み込んだ。
唇の動きだけがその名前を紡ぐ。
『セ』『バ』『ス』『チャ』『ン』、と。
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