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ザスクールは屋敷でチェス板を広げて座っていた。
向かいの席に人はいない。
無表情でKINGの駒を見つめている。
すると後ろから扉が開く音がした。
ザスクールは満面に笑みを浮かべる。
「あぁ、やはり貴方が来たのですね…。」
ギシッギシッと軋む床を踏み締めながら近付き、五歩目で止まる。
「私では何か不都合でも?」
セバスチャンは静かに言った。
ザスクールはニヤァと笑い、振り向いた。
月明かりが薄暗く彼の顔を照らす。
「いいえ…、貴方がファントムハイヴ伯爵を連れて来ないのは予測済みでした…。」
セバスチャンはふとクスクスと笑う。
「「予測」ではなく、「確信」でしょう?」
一呼吸おき、セバスチャンは笑う。
「本当に覗き見がお得意ですね。
あの蝙蝠は貴方の分身。
坊ちゃんの悪夢も、貴方が見せていたのではないのですか?」
ザスクールは答えない。
それは肯定を意味していた。
そして椅子から立ち上がる。
「執事殿…、やはり貴方は素晴らしい…。
そこまで推測できるとはね…。」
「ファントムハイヴ家執事たるもの、これくらいは常識です。」
ニコッと笑い、セバスチャンは言う。
ザスクールは向かい側の椅子を引いた。
「さぁ…、立ち話も何です。
"ゲーム"でもしながらお話しましょう…。」
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