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シエルは窓の外をぼぅっと眺めていた。
セバスチャンがあれから丸一日帰って来ない。
普段ならばそれほど気にしないのだが、
何故か気になって気になって、そして何より…、胸を吹き抜ける風のようなものを感じていた。
「あのぅ…坊ちゃん…。」
心配かけているのか、フィニ、メイリン、バルド、タナカ(ただし省エネ状態)が話し掛けてきた。
「あ…あぁ、何だ?」
「その…大丈夫ですか?」
フィニは心配気にシエルを見る。
シエルはセバスチャンが発ったあの夜から、一睡もせず、食べ物も一口も食べなかった。(まぁ、食べられるものを作れる奴がいないというのもあるが。)
「あぁ…済まない。大丈夫だ。」
「とりあえず何か食べた方がいいですぜ?」
バルドも心配そうに言うが、『だったら食べられるものを作れ。』とシエルは心の中でツッコミを入れた。
「いい、食欲はない…。」
「じ、じゃあお休みになられた方がいいですだよ;」
メイリンがぽんっと手を叩いていうが、『だったらベッドを一回整えろ。』とシエルはツッコミを入れた。(もちろん心の中で)
「いい、眠くない…。」
シエルが答えると、言うことが無くなったのか、三人は黙り込んだ。
ふとタナカを見ると、何故かリアルタナカになっている。
「な…;」
「あ、リアルタナカさんだ。」
「久し振りだな。」
お馴染み「ほっほっほ」と言うと、タナカはにっこりと笑いかけた。
「シエルさま、セバスチャンなら大丈夫でございますよ。
あの執事が本気になって、出来ぬことはありません。」
いかにもある励まし方だが、不思議とその言葉だけでシエルには最大の励みになった。
タナカはぷしゅっと省エネ状態に戻る。
「そうですだよ!あのセバスチャンさんですだ!」
「ウチの執事は並じゃないんだから、気にしないで大丈夫ですぜ!」
「だから坊ちゃん、元気出してください、ねっ!」
シエルはフッと苦笑した。
役立たずのバカ共が生意気を。
「…そうか、なら腹がへった。食事を持て。」
「へい!分かりやした!」
「食えるものを作れよ。」
「へい!」
シエルはばたばたと駆けていく使用人達を見送り、クスクスと笑い、再び窓に目をやった。
「…どうやらウチの使用人共の頭は、からっぽじゃなかったらしいぞ。」
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