好きだから

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「ギャーッ!!」 ふと屋敷中にメイリンらしき絶叫(に近い声)が轟く。 「な、何だ!?;」 「ハァ…また、ですか…。」 驚いて面食らうシエルを余所に、セバスチャンは溜息をつく。 「では坊ちゃん、"仕事"が増えましたので、これで失礼致します。」 ニコッと笑い、部屋を後にする。 残ったシエルは深く椅子に座りなおした。 …またそうやってお前は… 僕の手から離れていく…。 シエルは先ほどと同じ胸の奥が疼く違和感に苛立ちを感じた。 何故だ、何故「好き」などと言っておきながら僕の傍から離れていく? 好きならずっと傍に居ればいいものを…何故… ふとシエルはハッとした。 何を言っているんだ僕は。 これじゃまるで、僕がセバスチャンを――… 「…好き…?」 「ん?誰が??」 ひょうきんな声で上から降ってきた。 「!?、な、劉!?;」 「やっ、伯爵、御久し振り~♪」 目の前に中国貿易会社英国支店長の劉が居た。 だが、裏には上海マフィアの幹部という顔も持っている。 シエルにイーストエンドの暗黒街の取り締まりを命じられている。 「何しに来た?;訪問するなら手紙の1つを寄越せとこの間言ったばかりだろう。」 「え~?そんな事言ってた?」 「言った#。ところで何の用だ。」 惚ける劉に尚も苛立つ。 「いや~?だって何かお暇でさ。伯爵に会いにきただけなんだけどね~。」 劉は笑いながら机に腰掛ける。 シエルは相変わらず仏頂面のままだ。 「だから何故僕の家なんだ# イーストエンドならいくらでも"暇つぶし"などできるだろう?」 「え~、だってあそこいらの住人と"暇つぶし"するくらいなら伯爵に鬱陶しがられた方がいいと思って。」 笑いながら言う劉にシエルはため息をついた。
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