好きだから

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「…何をしてらっしゃるのです?」 ふと響く声にシエルはハッと顔を上げる。 扉の前に、お茶を乗せたワゴンを傍らに添えたセバスチャンが突っ立っていた。 じーっと半目で二人を見つめている。 劉は「やぁ♪」とそのままの体勢で笑った。 「久しぶりだね、執事君っ♪」 「…左様でございますね。」 口元に笑みを浮かべてはいるが、例え難いオーラを放っている。 シエルは弁解しようと体を起こすと、それより先に劉が立ち上がっていた。 「折角お茶用意して貰ったのに悪いんだけど、我はそろそろ行かなくちゃいけないから♪ 伯爵、またね♪」 シエルは手を振りながら部屋を後にする劉をぽかんと眺めていた。 「何だ、アイツは…;」 言いかけてハッと我に返る。 怖ず怖ずとセバスチャンを見ると、セバスチャンは瞬きもせずにシエルを見据えていた。 暫くの沈黙が流れる…。 セバスチャンが口を開いた。 「…劉様をお見送りして参ります。」 そう告げると、一礼して扉に手をかけた。 「っ…ま……」 シエルは呼び止めようとした。 が、次の言葉が浮かばない。 待て、と。 行くな、と言った後、一体何を言えばいいのか。 セバスチャンは静かに部屋を後にした。 刹那、がたんという椅子の音とともにシエルは扉へ走って行った。
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