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「セバ……チャン……」
涙が溜まる目でセバスチャンを見上げる。
セバスチャンは頭を上げ、ふわりとした笑みを綻ばせた。
「私としたことが…、主に心細い思いをさせてしまったようで…。」
シエルの頬に手を添え、親指でそっと涙を拭う。
温かくはない悪魔の手。
けれどシエルはひしっと頬に添えられた手を握った。
この冷たい温もりも、
嫌気がさす悪魔の皮肉も、
全てが今シエルには、包み込む親のように、とても広く、とても心地良かった。
小さな身体を大きな腕が包み込む。
そっと引き、その胸に寄せた。
「私は此処おります。」
こんなに小さな身体で、
大きく振る舞い、
誰にも甘えられず。
「いつどこで何があろうと、
坊ちゃんを独りにはさせません。」
孤独に育ってきた貴方には、
憎しみしか残らなかった。
「いかなる時でも、私は…」
そんな貴方を、
どうして独りにすることが出来るだろう。
「…坊ちゃんのお傍におります。」
虚勢を張り、
いかに誰が貴方を守ろうと救いの手を差し延べたとしても、
貴方は拒絶し、その手を払いのけるのでしょう。
いつだって貴方は孤独。
そのために私がいる。
貴方が望むこと、
貴方が願うこと、
全てに私は忠実に。
それは貴方が自分に与えた最初で最後の"鎧"。
私がお傍にいることで、貴方の願いが叶うなら、
鎧にも矛にもなりましょう。
ただ願わくば……
私の想いが成就することを…
切に…、切に……。
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