束縛の鎖を

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「坊ちゃん、お目覚めのお時間ですよ。」 いつものように執事が起こしに来る。 カーテンを開けて朝の日差しを取り込み、微笑みながらシエルに顔を向けた。 「本日はよい天気でございますよ。」 シエルは眠い目を擦り、眩しい光に目を細める。 ふわりといい香りを漂わせ、セバスチャンが紅茶を差し出す。 「本日はアッサムのよい茶葉がインドから出来上がったと耳に入れましたので、アッサムのミルクティーに致しました。」 「ん…」 大きく欠伸をし、ぐぐっと背骨を伸ばす。 セバスチャンはキッチリとアイロンをかけられた新聞を差し出しながらニッコリ笑った。 「ロンドンの不穏な空気は和らいでいるようですよ。 やはり仕事はするものですね。」 「…何の話だ#」 シエルがセバスチャンを凝視すると、セバスチャンは尚、口元に笑みを浮かばせる。 「いいえ、何でも。」 「…フン、まぁいい。 今日の予定は?」 着替えを手伝いながらセバスチャンは口を開いた。 「本日はファントム社から秋製品のサンプルが届いておりますので、お仕事が優先となります。 午前中はファントム社のお仕事。 午後からはお客様がいらっしゃる予定です。」 シエルは動きを一瞬止めた。 「客人?誰だ。劉だったら即刻追い返せ。」 「残念ながら劉様でなく、初見である"イルヴァルト=ルイ=カシミア"伯爵様でございます。」 セバスチャンの言葉にシエルは眉を寄せた。 「カシミア氏だと?彼は幾分か前亡くなったと聴いたが…。」 「坊ちゃん、少々お耳を拝借…。」 セバスチャンはシエルに囁いた。
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