契約を交わして

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「ギャ――!!」 後ろから絶叫(に近い声)が聞こえた。 「!?、何事です!?;」 慌てて声のするほうへ向かうと、割れた皿の破片に埋もれたメイドのメイリンがいた。 見慣れた光景ではあるが、ここまで酷く割ったのは初めてだ。 皿棚に皿が一枚もない。 「………これは……」 「あ゙ッ;;セセセセバスチャンさんッ!!;;」 明らかに怒りのオーラを出しているセバスチャンにメイリンはどもりながら謝った。 「すすすすいませんですだ!!; サラダ皿と大皿と…あと何枚か出そうとしたら…;;;」 ぺこぺこと頭を下げるメイリンの足元には、割れた皿(粉々の破片)と、転がったキッチンの椅子。 成る程、椅子から落ちた、と…と、いうよりも何度繰り返すつもりなんでしょうね。 いい加減学習能力を身につけていただきたいものです。 うっすらと殺意が沸いて来たセバスチャンは、溜息をついてそれを抑えた。 「ハァ…、仕方ありません。 至急皿を調達しないと晩餐どころか昼食さえもできませんから。」 「ハハハハイですだッ!!;;」 ビシッと背筋を伸ばしてぱたぱたと駆けていった。 「………まったく…この疲れているときに……」 深く溜息をつき、目頭を押さえた。 身体が疲れているのではない。セバスチャンは悪魔だ。 そうそう疲れるものではない。 精神的に疲れているのだった。 主人に仕える身として、 執事、として、 セバスチャン、として。 すべてが疲れてしまう。 何故かは分かっている。 だが言えない、誰にも。 そう、誰にも…。
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