*第二章*

33/33
42299人が本棚に入れています
本棚に追加
/571ページ
言うなり、蘭丸は背中を見せて曲がり角を走り去る。 気付ば空には星が惜しみも無く瞬いていて、ああ、明日もいい天気だな、と桜子は嬉しくなった。 パチッパチッと点滅を繰り返す飛行機を眺め、桜子は夜の帰り道の空気を吸い込む。 なんだかとても贅沢な気分だ。 ふと、コンクリート道路の上の空気は汚れているといつだったか祖母が言っていた事を思い出す。 確かにそうだとしても。 確かにそうだとしても、コンクリートの上で育った私には、この空気で十分満足なんだよ。 ふ、と笑った後に、桜子はペダルに力を込めた。 家に帰ったら、……夕飯だ。
/571ページ

最初のコメントを投稿しよう!