脱出

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 ――何でこんな時に赤の他人なんか助けるんですか?    そう言って非難しているような目だった。しかしギルリアはそんなパウルの気持ちを無視して、 「とっとと行くぞ」  そう言って駆け出してしまう。パウルはそれに唖然とし、一つ溜め息を突くと、少女に向かって苦笑した。 「僕達も行こうか」      村を抜けて森に入ったところで、三人はヴィッコリス隊に囲まれてしまう。 「左右に三人、後ろに二人、そして――」  ギルリアは懐からナイフを取り出して前方に投げつける。ナイフは、五メートルほど前を走っていた敵兵の後頭部に突き刺さった。 「前にも一人いたな」  ヴィッコリス隊は、ギルリア達の実力を知っているので近づいて戦おうとせず、遠距離から弓矢や投石の攻撃に徹している。 「ギルリアさん、頼みますよ!」  少女を連れている為に、それらの攻撃を防ぐので精一杯のパウルが悲鳴を上げる。その時、少女目掛けて飛んできた矢を、剣で弾き返している。  パウルのしたたかなところは、この直後、敵の攻撃が一旦止まったのを見計らい、懐から小型のナイフを取り出すと、自分達の左側を走っていた敵兵の一人に投げ、見事眉間に命中させている。 「これで後七人ですか」 「やりゃ出来るじゃねぇかよ」  ギルリアはそう言うと、地面に落ちている石を拾い上げ、右側を走っているヴィッコリス隊に投げつける。それを鼻先に喰らった一人は衝撃で倒れて気を失う。ギルリアは疾走し、その一人の胸に剣を突き立て止めを刺した。それから、右側から残撃を繰り出してきた者に対しては、頑丈な鉄の篭手で防いだ後に、顔面を殴りつけ、左側から矢を飛ばしてきた者に対しては、敵から奪った剣を投げつけて左胸に命中させている。  パウルは、左側の三人が倒された事を確認すると、残ったヴィッコリス隊の死角となる木の下に少女を置き、右側の二人目掛けて疾走した。  飛んでくる矢をかわしながら二人に近づき、一人の胴をなぎ払い、振り返ってもう一人は袈裟切りに斬って捨てた。あまりの速さに、二人は反撃も防御も出来なかった。当然、パウルはかすり傷一つ追っていない。  二人を倒したパウルは、少女の許へ戻ろうと振り向くと、後ろにいた兵士二人が、彼女の直ぐ近くまで来ていた。ギルリアは少女から離れており、彼女自身はその場に剣を持ったまま座り込み、兵士達が近づいている事すら気付けていない。
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