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「後ろーーー!!!」
パウルは叫び、且つ自分の持っていた剣を敵兵目掛けて投げつけると、少女目掛けて走り出す。パウルの声に反応して、少女は振り返る。
そこには自分に襲い掛かる敵兵の姿があった。恐怖で目を瞑る。
「剣を前に出せ!!!」
訳が分からず、その通りにする。
そのとき――
剣を握る手に、何か柔らかい物を突き刺す感触が伝わる。それと同時に、生暖かい水しぶきの様なものが顔を濡らした。
少女は恐る恐る目を開けると愕然とした。自分が握っている剣の先には、男の喉が突き刺さっており、自分の顔を濡らしているのは、その男の血だった。
「あ、い、あぁ……!」
悲鳴を上げようとするが声が出ない。震えで、手の力が抜ける。支えを失った剣は、結合している男ごと少女の脇に転がった。
その間、ギルリアが残った一人を斬り殺している。これで周囲にはヴィッコリス隊はいなくなった。
「よくやったね」
少女の脇に駆けつけたパウルは、優しく肩を叩いてやる。そして、先ほど投げた自分の剣を拾った。
「直ぐ別の奴等が追ってくるぞ!」
ギルリアは二人を急かす。
パウルは、別にもう一本敵から剣を奪って少女に握らせようとするが、震えの止まらない手は剣を握る事を拒み続ける。
「しょうがない」
諦めて、自分で立つ事も覚束ない少女を無理やりに立たせると、しっかりと手を握って走り出す。
(私、人を殺した……)
少女は、疲労と混乱の中にあった。
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