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一つの大陸がある。名前は無い、ただ大陸と言った。
この四角い形をした大陸に、文化が生まれ、暦がつけ始められてから五百と二十二年が経つ。その間、人々は戦乱と平静を繰り返し営んできた。
五百二十二年は、戦乱の方であった。
これより約七十年前、北西に興ったキルティス帝国の覇王・トラフェルダ帝が瞬く間に全土を統一し、世に平穏をもたらした。しかしそれもつかの間で、彼の死の直後、宰相と有力諸侯の間で争いが始まり、明確な決着の付かないまま、短命の内に統一国家は崩れ去った。
それから七十年、僅かながら安定した時期はあったものの、大陸全土で戦乱が続いている。
愛する人を奪われるもの、町や田畑を荒らされるものにとってこれは忌々しき事であるが、逆に戦乱を食い物にする商人、武器や兵器などを製造する技術者にとっては喜ばしい限りである。
もう一つ、”傭兵”と呼ばれる者たちにしてもそれは同様、或いはそれ以上の事である。商人や技術者にしてみれば、知恵や技術を別の方向に向ければよいだけだが、傭兵にしてみれば、戦いの知恵や技術などはどう方向換えしたらよいのだろうか。
一割か二割ほどの者達は、各国や街に雇われることになるが、そのほかの者にしてみれば、今までと全く違う仕事を徒手空拳で探さねばならない。そんな面倒な事をするぐらいならと、大概は無頼の盗賊と化す。そもそも傭兵と言うもの事態いかがわしく、傭兵でありながら盗賊もこなしたり、元は盗賊だったりするので当然と言えば当然の結果である。
その為、平穏な時代には平穏な時代で、彼らを討伐する為の戦乱が無数にあった。
それは勿論、どの国や街にとっても頭痛の種であり、それを解消する為のシステムとして、大陸傭兵協会なるものが、大陸中の有力者の協力により結成される。
この組織は、何処の勢力にも属さず、傭兵を各国に派遣したり、協会に従わない同業者の討伐や国家の手に余る賊徒の征伐をしたり、彼らの血や肉の飢えを乾かさない為の、闘技大会等を定期的にを主催している。特に闘技大会は、平穏な時代であっても殺人が合法的に行える数少ないイベントでもあり、刺激を求める観覧者達からは熱狂的な支持を得ており、協会の重要な収入源となっている。
ともあれ、協会が出来た事により、平穏な時代の戦乱が大分少なくなり、傭兵イコール盗賊と言ったイメージは薄くなった。
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