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(嫌な奴が来た)
ギルリアはこの男が嫌いだった。横暴な態度もそうだが、何時も人を小ばかにした様な薄ら笑いを浮かべている。そんな顔がどうにも気に食わない。
「勝負をしようぜ。どっちが多く敵の首を狩れるかをよ」
「……興味ないね」
馬鹿らしいと思った。功を競う事がではなく、ヴィッコリスと競うのが嫌なのだ。ギルリアは小さな溜め息を突くと、視線を霧の先へ戻した。
「連れない奴だねぇ。もしかして勝てないのが分かっているから逃げるのかな?」
「別に。アンタ一人で功を独り占めすれば良いじゃないか。その暁にはオーガ団総出で、盛大に祝ってやるからさ」
「てめぇ……、まぁいい。後で吠え面かくなよ」
背後から唾を吐き出す音がして、靴音が遠ざかっていくのが聞こえる。その音が聞こえなくなると、ギルリアは溜め息を突いて言った。
「何がしたいのかね、アイツは」
「ギルリアさんに対抗意識持ってますよね、あの人」
何時の間にか、隣にはパウルがいた。
「ああ、そうみたいだな。全く厄介な事だ」
オーガ団は何度かベイネスに雇われたことがあり、その度にヴィッコリスから勝手に挑戦状を叩きつけられている。ギルリアはそれには取り合わないのだが、結局武功は上となってしまい、ヴィッコリスは悔しさのあまり不条理な暴言や、讒言を上官にしている。勿論、上官も取り合わないし、ギルリア自身も気にはしていない。
「嫉妬深い男って嫌ですよね」
「女だったら良いのかよ?」
「女でも嫌ですよ」
「なんだよそりゃ」
そんな冗談を言って笑った。
島の南には小さな軍港があり、作戦の初目的はそこの占拠である。
オルコン隊は、途中で哨戒部隊と思われる一艘の小船に出くわしただけで、軍港に突入した際も、敵軍は短時間の戦闘を行うとさっさと撤退してしまった。
「兵力が少な過ぎないですか? それと戦意もそんなに高くないような……」
軍港占拠後、パウルがギルリアにそう指摘する。
「罠か。どこぞに兵でも伏せている可能性はあるな」
念の為と、その事をオルコンに伝えにいくと、部隊長の一人でディタと言う男も同じ危惧を抱いたらしく、その事を進言しているところだった。
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