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「カイン、リチェ。行ってくる。」
「いってらっしゃいませ、アベル様。」
「いってらっしゃ~い。」
艶やかな金の髪は、日溜まりのようにも、冷酷な月灯りのようにも見える。
アイスブルーの切れ長の瞳は、動揺も緊張も見せていない。
入学式こそ私服だが、士官学校には正式な制服がある。
最も、騎士軍学部には制服着用の義務は無いのだが。
アベルは、家の都合でねじ曲げられた性別の解消の為に、ここに来たのだ。
アベル・S・ハイウインド。
身長162cm、体重47kgで細身だが、瞬発力・持久力も共にある。
麗しき外見も、騎士家の令嬢であればこそ。
スカートからのぞく細い足も、儚い訳ではなく、むしろしなやかだ。
軽やかな足取りで、正門へと向かう姿に、多くの生徒たちが振り向く。
最初はその美しさに、次はハイウインド家の最強が女であることに、驚嘆が垣間見える。
制服は軍服にも見えるが、正規軍の緑に対し、制服は黒。
そして、女子生徒はプリーツスカート。
また、騎士軍学部は指定される物が幾つかある。
他の学部で無い証、それは腰に下げられた細身の片手剣。
騎士のタシナミとして、サーベルを常に帯剣することが義務付けられているのだ。
サーベルを帯剣する為、制服よりも、騎士のような装いをする者も多い。
騎士軍学部は独特で、騎士特有の一騎打ちの為に、剣技に限らず、体術や杖術、射撃術も学ぶ。
また、騎士軍学部に入るということが成功を約束されると言われるのは、騎士軍学部内で、騎士家の人間に気に入られれば、軍内で安泰だからだ。
そんな狭き門を潜り抜けた9人と、最強の女騎士の学生生活が、今幕を開ける!
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