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「ということは、逆に裕も俺のものってことでいいの?」
そう聞くと、まだそっぽを向いたまま裕はコクりと頷いた。
それがとても可愛かった。
意外と独占欲強いんだな、裕も。
自分が強いのは分かっていたことだけど。
「そっか、裕が俺のものかー」
口に出すと自然に頬が緩む。
今まで裕を自分のものだと考えたことは無くて、付き合ってから裕が女の子と仲良さげに話をしていても、ヤキモチを焼くことさえ罪悪感を覚えていた。
でも、もうヤキモチを焼いていいのかもしれない。さっきの裕のように。
「じゃあ約束しよう。お互い離さないようにするって」
離れていかないって。
──付き合って初めての約束だった。
よくカップルには付き合う上でルールみたいなものが存在すると聞くが、俺たちにはそのようなものは存在しなかった。
裕を縛りたくなかった。
裕がやっとこっちを向く。気づけば、もうすぐ裕の家の前というところに来ていた。
「......いいの?そんな約束して。本当に離さないよ、俺」
こっちを向いたその表情はとても真剣なものだった。
繋いだ手が、少し強く握られる。
「...うん」
離さないで。
そう囁くと、裕は大きく何度も頷いた。
ちょっと泣きそうな笑顔で。
俺たちは幼馴染みで、その前に男同士で、いつまでこの関係でいられるか分からない。
その先なんて考えたくない。
ずっと一緒にいたい。同じ時間を共有していたい。
今はただ、この約束をずっと守れることを願い、互いを信じるしかなかった。
裕の自宅に着いたあと、支度を終えるとすぐに二人で眠りについた。
お互い体をきつく引き寄せ合って、離れてしまわぬようにと。
窓から差し込んだ月光が、優しく俺たちを照らしていた。
Fin?
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