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人は、変化を恐れる。
変わってしまうのが怖くて。
変わりゆく先が見えなくて。
例えば、俺みたいに。
【 幼馴染み。】
目覚ましが鳴る。
それを片手で止めて、下へ降りて朝食を食べて身支度をして。
いつもと同じ時間にチャイムが鳴り、あいつが来たんだと告げる。
この日も、変わらぬ朝だった。
「はよ、航!行こうぜ」
夏なのに涼しげな笑顔を浮かべ、裕が挨拶をしてきた。
俺は笑顔を返し、裕より先に家の門をくぐる。
毎朝俺の家まで迎えに来てくれる裕は、俺の幼馴染みだ。
家が近く、幼稚園小学校と、毎朝一緒に登校していたので、中学でも同じパターン。
こいつは俺と毎日登校することを、どう思っているんだろう。
「なあ、俺達中学三年にもなって一緒に登校するの、どう思う?」
歩きながら裕の方を見上げると、自然と目が合った。
「なに、航は嫌?」
「違うけど。その…裕は本当は、女の子と登校したいとか、一緒に行くの面倒臭いとか思ってないかなーって」
一応はお年頃なんだから、と。
遠慮がちに、でも平然を装って問い掛けた。
すると、裕は一瞬考えた表情を見せたが、すぐに笑顔になった。
「んなわけないじゃん。俺はこのままがいいよ。だって、中学卒業したら一緒に登校するなんて出来ないだろ」
「…そっか。そうだよな」
裕の答えに、顔には出さなかったが内心ホッとした。
そうだ。
もうすぐ裕とはずっと一緒には居られなくなってしまうんだ。
裕は頭が良いため、進路が別々になることは、聞かなくても分かっていた。
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