幼馴染み。

2/27
前へ
/62ページ
次へ
人は、変化を恐れる。 変わってしまうのが怖くて。 変わりゆく先が見えなくて。 例えば、俺みたいに。 【 幼馴染み。】 目覚ましが鳴る。 それを片手で止めて、下へ降りて朝食を食べて身支度をして。 いつもと同じ時間にチャイムが鳴り、あいつが来たんだと告げる。 この日も、変わらぬ朝だった。 「はよ、航!行こうぜ」 夏なのに涼しげな笑顔を浮かべ、裕が挨拶をしてきた。 俺は笑顔を返し、裕より先に家の門をくぐる。 毎朝俺の家まで迎えに来てくれる裕は、俺の幼馴染みだ。 家が近く、幼稚園小学校と、毎朝一緒に登校していたので、中学でも同じパターン。 こいつは俺と毎日登校することを、どう思っているんだろう。 「なあ、俺達中学三年にもなって一緒に登校するの、どう思う?」 歩きながら裕の方を見上げると、自然と目が合った。 「なに、航は嫌?」 「違うけど。その…裕は本当は、女の子と登校したいとか、一緒に行くの面倒臭いとか思ってないかなーって」 一応はお年頃なんだから、と。 遠慮がちに、でも平然を装って問い掛けた。 すると、裕は一瞬考えた表情を見せたが、すぐに笑顔になった。 「んなわけないじゃん。俺はこのままがいいよ。だって、中学卒業したら一緒に登校するなんて出来ないだろ」 「…そっか。そうだよな」 裕の答えに、顔には出さなかったが内心ホッとした。 そうだ。 もうすぐ裕とはずっと一緒には居られなくなってしまうんだ。 裕は頭が良いため、進路が別々になることは、聞かなくても分かっていた。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

450人が本棚に入れています
本棚に追加