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頭も顔も良くて、運動神経まで良い裕。
何でも出来るのに、裕はそれを鼻にかけず、逆に髪をえんじ色に染めて先生に怒られている。
そんな奴だから、裕の周りにはいつも人が集まるんだろう。
そして、俺はそんな裕が好きだ。
それは友情や親しみなんかではなくて、恋愛感情として。
もちろん、そんなことを裕には言えない。
俺も、変わってしまうのが怖いから。
「航、聞いてる?」
裕が斜め下から俺の顔を覗き込む。
どうやら聞き流していたようだ。
「ごめん、聞き流してた」
「ふーん。いいけどさ、ボケッとしてたら電柱にぶつかるぜ」
そう言うと、裕がふざけて俺の頭を撫でてきた。
思わずびくりと肩を震わせる。
裕は何にも考えないで撫でるんだろうけど、俺はとてもドキドキする。
それは俺が裕を意識してしまってるということで、普通の友情ではなくて。
おどおどする俺を見て、裕は笑うんだ。
「あははっ、なんか犬みたいだ。航の髪って触り心地良いし。びくびくしちゃって可愛ーい」
裕は撫でていた手を離すと、今度は抱きついてきた。
「ちょっ、何してんだよ!てか可愛いって言われたくない!」
「いいじゃん別にー」
お前はよくても俺はよくないんだ。
可愛いなんて言われて、抱き締められて。
揺らいでしまう。
俺は、このままずっと幼馴染みでいることを決意したのに。
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