幼馴染み。

3/27
前へ
/62ページ
次へ
頭も顔も良くて、運動神経まで良い裕。 何でも出来るのに、裕はそれを鼻にかけず、逆に髪をえんじ色に染めて先生に怒られている。 そんな奴だから、裕の周りにはいつも人が集まるんだろう。 そして、俺はそんな裕が好きだ。 それは友情や親しみなんかではなくて、恋愛感情として。 もちろん、そんなことを裕には言えない。 俺も、変わってしまうのが怖いから。 「航、聞いてる?」 裕が斜め下から俺の顔を覗き込む。 どうやら聞き流していたようだ。 「ごめん、聞き流してた」 「ふーん。いいけどさ、ボケッとしてたら電柱にぶつかるぜ」 そう言うと、裕がふざけて俺の頭を撫でてきた。 思わずびくりと肩を震わせる。 裕は何にも考えないで撫でるんだろうけど、俺はとてもドキドキする。 それは俺が裕を意識してしまってるということで、普通の友情ではなくて。 おどおどする俺を見て、裕は笑うんだ。 「あははっ、なんか犬みたいだ。航の髪って触り心地良いし。びくびくしちゃって可愛ーい」 裕は撫でていた手を離すと、今度は抱きついてきた。 「ちょっ、何してんだよ!てか可愛いって言われたくない!」 「いいじゃん別にー」 お前はよくても俺はよくないんだ。 可愛いなんて言われて、抱き締められて。 揺らいでしまう。 俺は、このままずっと幼馴染みでいることを決意したのに。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

450人が本棚に入れています
本棚に追加