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いつ頃だっただろう、
裕のことが好きだと自覚してたのは。
確か、小学校六年生の時だ。
当時、初めて裕が女子に告白されているのを目撃したことがあった。
その時、感じたものは羨ましいとかそんなんじゃなくて。
もっと、どろどろしたような、真っ黒い感情だった。
友達に対する感情じゃないのは、なんとなく分かった。
それが、きっかけだったかな。
「もー。そろそろ離せよ。学校着くぞ」
ちょっと名残惜しいが、裕に離れさせる。
温もりまで離れていくのを感じて、少し寂しかった。
離れたのに、早いままの鼓動を打つ心臓が憎らしかった。
「航のけちー。あ、早坂っ!」
ある人の影を見つけると、裕がその人に歩み寄る。
俺から離れていく。
「おはよう、裕。今日の数学の単元テスト出来そう?」
「うーん、多分出来んじゃない?」
早坂さんと裕は親しそうに会話をする。
それだけで、俺の心は嫉妬心でいっぱいだ。
「あんた頭良いもんね。羨ましい限り。…あれ、杉浦君だ。おはよう!」
早坂さんは俺に気付くと、挨拶をしてきた。
俺は笑顔で挨拶を返す。
「じゃあ裕、あたし先急ぐから。また教室でね!」
そう言うと、彼女は走って学校へ向かった。
走っていく後ろ姿を目で追いかける裕に気付きながらも、俺は知らないフリをした。
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