*12 年越し

19/31
前へ
/642ページ
次へ
「やっぱ美味そー!いやぁ、正月はこうでなくっちゃねぇ」 「新八っつあん……去年みたいに、餅の食べすぎで腹壊さないでよ?」 「おぅ、まかせとけ!」 「……いや、絶対また同じことを繰り返すだろ」 「俺もそう思うよ、左之さん」 『あはは、新年早々賑やかだな』 さっきまで不満そうだった彼らは、お節を前にして上機嫌になってしまった。 盛り付けを済ませたものをいつも食事する部屋に運ぶと、みんなが歓喜に震える。 来年も、私はこの団欒の中にいるのだろうか? 帰れたら勿論嬉しい。 だけど寂しいとも思った。 皆が楽しそうに笑っていて、その和の中に入れないのは……凄く寂しい。 「………」 私はその場を離れ、縁側に座った。 朝だからか、外は寒くて。 軽く身震いした。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4104人が本棚に入れています
本棚に追加