*12 年越し

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「はぁ……甘く見られたもんだな」 また溜息をつく土方さん。 うぅ、きっとこんなに溜息をつかせてるのって私ですよね…。 ごめんなさい、土方さん。 「俺は平気で人を殺せる。そんな殺人鬼に、可愛いって言葉が似合うとでも思うか?」 「そんな!土方さんは殺人鬼なんかじゃありませんよ!」 「何故そう言い切れる?その気になれば、お前の首もすぐ刎ねれるんだ」 「……でも、刎ねないでしょう?」 「何?」 土方さんは眉間に皺を寄せた。 そして私の言葉を待っている。 「だって、土方さんはその気になってませんもん」 「………」 「だから、土方さんは私を殺しません。でも、殺さなければいけない事態になれば、きっと土方さんは躊躇することなく私を殺すと思いますけどね」 「……お前って」 「はい?」 「強い女だな」 「……強くなんかないです。私、弱いですよ?」 「いや、強いさ。あと数年もすりゃあ、いい女になるぜ?」 「……あ、ありがとうございます」 『いい女』になる。 その言葉を平然と言う土方さんに、私は顔を赤らめた。 恥ずかしいというか、土方さんが私を女として見てくれることが嬉しかったのかな。 行き場のない想いが胸の中で暴れているから、私の心臓もバクバクと強く脈を打ち始めた。
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