…~月~…

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チシャ猫がにいと笑ったような、細い月の明るい夜。 その光の中に男がひとり。 傍らに、女がひとり。 すらりとした長身の男。月の光を写し取ったような輝くプラチナの髪にはゆるくウェーブがかかっている。 その下には月の女神も平伏するであろう美しい、陶磁器でできた人形のようなすべらかな白い顔。 「眩しい」 形の良い眉をしかめ、男が一人言のように呟く。 その言葉を受け、男より頭ふたつ分ちいさな女がついと顔を男に向けた。 「旦那様、本日は珍しくお昼間に起きていらっしゃいましたから」 そのくりくりとした瞳の大きな目をちらりと見ると、"旦那様"と呼ばれた男のしかめた眉が緩んだ。 男とは対象的な黒い髪と瞳。前髪は眉の上ですっきりと揃えられ、耳の高さで切り揃えられている癖の無い髪のせいか、レトロな印象を受ける。 ふっくらとした桜色の頬、ちいさな鼻にちょこんと乗った丸眼鏡。 それがまた愛らしい。 例えるなら男が凜とした白百合。女は可憐な秋桜だろう。 「カノコ」 カノコ、と呼ばれた女は男を見上げ嬉しそうに微笑んだ。 それを見つめる男の瞳のなんと優しいことか。 「そうか。だから光が目に滲みるのだな」 そう言って、また月に視線を移し眩しそうに目を細める。 まったく今日は本当に来客の多い日だったよ……
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