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「それで?『わざわざ』『こんな辺鄙な所』まで来た理由はソレかアル?」
「いやぁ~コレを呑むと生き返るようだね!最近どうしてなかなか俺にチを分けてくれるコがいなくってねぇ…これも時代かなぁ寂しい事だよ。本当にエネジィ補給が難しいんだからねぇ。吸血鬼なんざ因果な商売だよ」
カノコが漬けた果実酒をご機嫌でお代わりしているアルフォート…アルに、精一杯の厭味を込めてみるが相手には通じていないようだ。
本当にこの男(アル)は良く喋る。口を動かしていないと死ぬのかお前は。と言いたくなる程だ。
確かに我等吸血族はエネジィと呼ぶ他の生命力を補給する事で力を蓄えることができる。
そのエネジィは生きている人間から頂くのが一番手っ取り早いし、吸収も早いのだが、カノコの造るような混ぜ物無しの手を掛けた物や自然物からも補給する事ができる。
…まぁ『カノコが造る物』は特別な訳だが。
そんな事より同属のお前が吸血『鬼』と言うな。と言ってやりたい。
「………そんなに気に入っているならひと瓶持ち帰るがいい。
今すぐ持ってこさせよう。
そしてすぐ帰れ。今すぐ帰れ。俺は寝る」
「お、くれるのか!さんきゅ。あ、お代わり貰えるかな?いつも愛らしい俺の撫子」
誰が『俺の撫子』だ。誰が。と言わんばかりの視線をアルに向けるが、どこ吹く風とばかりに素知らぬ顔で空のグラスをカノコへ向ける。
が、ガラス細工のデキャンタの中も空。呆れた様子で「新しい物を出してきますね」と、カノコがゆっくりと二人に微笑み、部屋を出た。
「それで?間怠っこしい真似をしてまでカノコを遠ざけて何の話だ?」
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