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「何だ。気が付いてたのか」
男の問いにアルの(見た目だけは)愛らしいカーブを描いた眉がぴくんと片方上がる。
「当たり前だ。お前は解りやす過ぎる。……多分カノコにもバレバレだ。」
「あちゃー…」
本気で『しまった』とゆうような顔をする自称親友の方へ体を向け、話を聞く体制を作った。
「簡単な話だ。ヴァンピール(吸血種)が暴れている村がある」
先程までのお茶ら気た雰囲気はどこへやら。すうと顔の前で掌を組み、落とした声で話し出した。
「山間の鄙びた小さな村なんだが……昔から一人の同種(吸血鬼)が住んでいたらしいが、」
「………狂ったか」
異種族同士が共存しているのはさほど珍しい事ではない。
人は魔女から薬を買い、年頃の娘は水晶の民の造るアクセサリーに憧れる。
争う事を、暴力を望む輩がいるのは人も異種も同じ。
平穏な日常を望む者、刺激を求める者、異種族とて変わりはない。
ただ、持っている力が強大な為、人には止める術がない。人の罪は人が。異種の罪は異種が裁くのが暗黙のルールだ。
「いや、そうじゃないんだ」
話を途中で遮られた事には気にも留めず、アルフォートは片方の手をついと上げ、男の言葉を否定しつつ続ける。
「その同種は遥か昔からその村に住んでいたらしい。穏やかな性格で、葡萄を作ったりして生活していたようなんだ…」
アルの顔がますます険しくなった。
「村の娘と一緒になり、子を授かったのが5年前。そして男は……………村から消えた」
「!?」
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