…~月~…

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「悪魔を退治してほしい」 "悪魔とはまた陳腐な"とは思ったが口にはせず、話を聞く。 アルに紹介された件の村長は、挨拶もそこそこに話を切り出した。 "吸血種と人のハーフの子供" あまり触れたくはないが、そうもいかない。人には手出しできない異種の罪を裁くのが男の生業だったから。 そう…カノコと一緒になったあの日から…。 「最初は家畜や動物からでした。」 村長にしては少し若いか。 浅黒く日焼けした、がっしりとした目の前の男は30代半ば位だろうか。鍛えた体を丸め、俯き加減で事の経緯を話し出す。 「最初、襲われた家畜を見ても山から狼でも降りて来たのかと思っていたのですが……」 村人にまで被害が及んだのは、3月ほど前かららしい。 家畜→物売り商人→村人 と、被害が広がり大胆になっていったようだ。 山狩りをしても効果は無く、村人は夜の外出を控えたり、見張りを立てたりしたが… 「最近は姿を見せるようになりました……堂々と昼間、家に忍び込み、襲われた人もいます」 年若い村長は苦悶の表情を浮かべ、緊張のせいか所々言葉に詰まりながら話を続ける。 「同属の男が消えた。と言うのはいつの事だ?」 アルの話から不思議に思った事を聞いてみる。 「…解りません。元々、あまり頻繁に村に顔を出す方でもなかったので。一年に1・2度『人恋しくなってね』なんて笑って酒場やら市場やらに出てくる位でしたから。」 それでも村人は歓迎し、話をしたり酒を酌み交わしていたという事は、よほど人当たりの良い人物だったのだろう。 「その妻は?元々は村の娘だったのだろう?」 男が死んだのなら、常識から考えて妻から連絡があるだろう。 「……それも、解らないんです。」 「何故?」 当然の疑問をぶつけてみる。 「ええと、嫁さんになった娘は両親を亡くしましてね。15の時です。村人みんなで一人前になるまで育ててやるか。なんて言ってたんですが、あの方が自分は一人だし、大きな屋敷で寂しいから。と言って引き取ったんですよ。」 なるほど、そのまま一緒になったパターンか。 「旦那が村に来なくなって、最近どうしたんだと聞いてみたけど『あたしがいるから大丈夫』なんて言ってね。ああ子供は村で産みました。5年前です。可愛い男の子でしたよ。」
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