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久しぶりに見る星羅の
笑顔
確かに今までも笑っていたけど、今日はとびきりの笑顔だった
『那智、どうしたの?』
「いや…てか、ナンパしちゃダメだろ?」
『だって…どうしても
話がしたかったんだ』
「那智、それは仕方ないんじゃない?」
「静流まで…」
そんな会話を
微笑みながら聞いていた
胡蝶
ホントに信じられない
だけど、確かに俺を那智と呼んだ
「那智!そんなに胡蝶を見つめないの!」
「ごめん」
「クスッ」
『ほら、呆れてるよ?』
「ばっ!違うわ!だよな?胡蝶」
「そうだね…賑やかで
楽しいよ」
そう言って笑いながら
髪をかきあげた
「あっ…」
『静流、どうしたの?』
「いや、何でもない」
やはり静流も見つけたんだ
胡蝶のつけているピアスを…
やはり胡蝶本人なのか?
ホントに奇跡なんて
あるのか?
『ねぇ…胡蝶』
「ん?」
『帰っちゃうの?』
「えっ…」
そうだよな
もし、胡蝶だとしたら
一体どこに帰るんだ?
俺達は引越しをしてしまった訳だし
「そうだな…この町が
気に入ったからしばらく居るよ」
『住むところは?』
「今から探す」
『那智…静流…』
星羅の言いたい事は
すぐにわかった
静流もそうだ
だけど…
もし本当に彼が胡蝶だとしたら、運命を変える事にはならないだろうか?
胡蝶は死んだ
奇跡も信じたい
『那智~!』
「あ、ああ…胡蝶」
「ん?」
「もしよかったら……
一緒に住まないか?」
『おいでよ、胡蝶』
「ごめん…今日出会ったばかりなのに、迷惑は
かけられないよ…でも、ありがとう」
『胡蝶…』
「もうこんな時間か…
今日は楽しかったよ」
『また会えるよね?』
「ああ、また明日今日の場所で」
『うんっ!約束だよ』
「ああ…約束だ」
時計は明日になろうと
していた
「じゃ、また」
「ああ…」
『おやすみなさい』
「おやすみ、星羅」
そう言って、闇の中に
消えて行った
胡蝶…
お前はどこに帰るんだ?
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