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『はい、胡蝶』
星羅が出来立てのみそ汁を置いてくれた
「ありがとう」
『このたまごやきは俺が作ったんだ』
「そっか…いただきます」
星羅がじっと見つめていた
たまごやきを一口食べる
えっ…?
甘いたまごやき
『どう?』
「すごく美味しいよ」
『よかった』
「どれどれ」
那智が一口食べる
『あっ、もう!』
「甘っ!てか甘すぎ!」
『だから胡蝶だけ別にしたのに…』
「てか、なんで胡蝶のだけ甘いの?」
『ん~、よくわからないけど…甘いのが好きそうだったから』
「そっか」
『うん』
那智も俺も正直、焦っていた
昔から、俺だけ甘いたまごやきを星羅は作ってくれていたから
そして今日も星羅は
昔と同じ甘いたまごやきを作ってくれた
そんな事、知る訳ないのに…
無意識に?
多分、那智も同じ事を
考えているはず
静流は、黙って星羅を
見つめていた
『胡蝶、おかわりは?』
「もうお腹いっぱい」
『そっか…』
「美味しかったよ…ごちそうさま」
『どういたしまして』
嬉しそうに笑う
そう言えば、那智と静流の会話がない
那智は気付いていないのか?
静流を見つめたら、
何か言いたげな顔をしていた
「胡蝶、昨日那智が神社まで迎えに行ったんだって?」
突然会話をふる
「ああ…そうだったかな」
「神社はお祭りの準備で賑やかだったでしょ?」
「えっ?…ああ、そうだね」
話を合わせた
『あれ?神社でお祭りなんかやってないよ?』
「えっ?」
星羅の一言で一瞬、会話が止まった
「ああ、そうだ…星羅、今日から胡蝶も店に行くよ」
那智が話を反らす
『ホント?』
「ああ」
『やった~!』
「よかったな」
『うんっ』
喜ぶ星羅とは対象的な
静流の顔がそこにはあった
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