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胡蝶が目覚める前に
花畑に来ていた
空はまだ薄暗い
「寒っ…」
手に持った缶コーヒーを
飲みながら、ひたすら
日の出を待つ
これ以上、静流に隠し通す事は出来ない
あいつはあいつなりに
かなり悩んでいたに違いない
そこまで追い詰めたのは
俺の責任でもあるしな…
もう少し、静流に気を使っていればこんな事にはならなかった
そうだよな…
考えて見れば、俺も昔は
胡蝶を愛した一人だったんだ
「ヤバッ…めちゃ眠い」
やはり少し寝ればよかった…
でも、眠ったら起きれないし
静流ちゃんたら、めちゃ激しいから…
(カラン……)
「あっ!」
手に持っていた缶が落ちた音で目が覚めた
危なかった…
「おはよう」
その缶を拾いながら胡蝶が言った
「あっ…やっぱり寝てたんだ」
「クスッ」
「胡蝶…あのさ」
おはようも言わずに
突然話を始めた
「わかってるよ」
「えっ?」
缶を握り潰しながら
胡蝶は言った
「目の前で星羅が押し倒されても何も出来ないんだよな…」
「胡蝶…」
「だけど、動けたらきっと静流をボコボコにしてたかも」
「ごめん…」
俺は胡蝶に静流の話をした
その話を黙って聞きながら、胡蝶は静かに言った
「お前も辛かったな」
「いや…俺は」
「結果的には騙している事になる訳だし」
確かにそうだ
秘密を持った時点で
俺達は二人を騙している
今日は風が強い
花畑が風を受けて
波のようにうねる
「わかった」
「えっ?」
「静流に話そう」
「いいのか?」
「お前はそのつもりで
俺を待っていたんだろ?」
「それは…」
「だけど、星羅には話せない」
「わかってる…ホントごめん」
「ばぁか!悪いのは口止めをした俺の方だよ」
「とにかく帰ろう」
「だな」
きっと静流が朝ごはんを作って待っている
いや、その前に
俺が居なくなった事に
気付いて、また怒らせてしまったかも…
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