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胡蝶は辛そうな顔で星羅を見つめていた
「気にするな」
「ああ」
そう言えばまだ静流には話していなかった
静流は何も言わないけど、気にしているに違いない
「那智、今日静流と帰るから星羅を頼むよ」
「わかった」
胡蝶は覚えていたんだ
レストランに行く為に
少し早目に店を閉めた
「星羅、ネクタイを買いに行こう」
『……うん』
「楽しんでおいで」
『わかった…じゃまた明日』
「またね」
那智に連れられて、
店を出た
片付けをしていた静流に声をかけた
「静流の疑問に答えるよ」
「えっ?」
「時間がない…行こう」
「時間?」
急いで店を閉めて花畑に向かう
「いろいろ悩ませてしまったみたいだね」
「いや…俺こそイラついてごめん」
「俺はさ…何故今ここにこうして居られるのかがわからないんだ…星羅や静流達にまた逢えた事はすごく嬉しかった…だけどね…嬉しいだけじゃなくて、悲しみも同時に与えられたんだ」
「えっ?どういう事…?」
「何故夜に俺は消えるのかが知りたいんだろ?」
「うん…」
「もうすぐわかるよ」
「えっ?」
太陽がゆっくりと沈む
「これが夜の俺の姿なんだ…」
太陽が沈んだと同時に、
姿を変えて行く
「嘘……胡蝶!」
「これが悲しい真実…」
「待って…胡蝶…」
何が起こったのか…
頭の中が混乱していた
「月見草……胡蝶」
確かに目の前で胡蝶は消えた
そして、足元には月見草
さっきはなかったはずなのに
だけど、これで疑問が解けた
やはり前に見たのは胡蝶
居なくなったのではなく
消えたんだ
きっと、那智もたまたま見てしまったのかも知れない
今起こった現実を受け入れるのに少し時間がかかった
だってそうだろ?
俺は有り得ないものを
目の前でみてしまったんだから…
「胡蝶…なの?」
そっと月見草に話し掛ける
返事が出来ないかわりに、突然風が吹き、月見草が頷くように揺れていた
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