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しばらく月見草を見つめていた
この月見草を家に持って帰ったらどうなるんだろう
「無理か…」
星羅にバレてしまうかも知れないしね
『静流~!』
「星羅…」
『どうしたの?こんな所で』
「ん?どんな服を着て行こうかなぁ~って」
『そっか、じゃ帰ろう』
「うん」
那智は黙って俺を見ていた
俺は小さく頷いて微笑んだ
『お腹空いたね』
「うん」
『那智、早く!』
「ああ」
三人で家に帰り、
スーツに着替えた
「う~ん…肩がこるな」
「そうだね」
『でも、似合ってるよ』
笑いながら星羅は言った
「よし、行くか」
『うん』
車に乗り、ホテルに向かう
花畑の横を通る時、
また月見草を見つめた
きっと1番悲しいのは
胡蝶だよね…
行きたくても行けないんだから
何故、胡蝶にあんな罰を与えたんだろう
余計に苦しませる為なら、間違っている
だって、胡蝶は何も悪い事はしていないのに…
兄弟で愛し合ったから?
それなら十分、苦しんだはず
「静流?」
「あっ…何?」
「いや、大丈夫か?」
「うん」
「そっか」
那智の優しさが嬉しかった
「よし、着いた」
『やった!』
車を降り、レストランに向かう
「星羅さん、お待ちしていました」
『お招きありがとう』
「では、窓際のテーブルへ」
案内されたテーブルは
夜景がよく見える席だった
『何だか悲しい夜景だね』
「まぁ…仕方ないさ」
「でも、こんな夜景もいいんじゃない?田舎らしくてさ」
『なのかな…』
確かに寂しい夜景
都会とは大違い
「よし、食べよう」
運ばれてきた料理に視線を移し、遅い夕食を食べる
『胡蝶にも食べさせたかったな…』
寂しそうに言う
「だったらさ、明日二人でランチを食べに来たら?」
「それいい!星羅、昼間なら寂しくないぞ?」
『うんっ!そうする』
「じゃ、ランチは俺達からのプレゼントだ」
『ありがとう』
やっといつものように
笑う星羅を見つめてホッとする
そうだよね
夜がダメなら昼間に来ればいいんだよ
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