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ふっと、同じ匂いがした。
顔を上げて辺りを見回す。
でも、通ったのは違う人だった。
どうして、シャンプーの匂いって忘れられないんだろう。
髪の匂いって覚えているんだろう。
今でも思い出す。
黒く輝く長い髪。
それの纏う匂い。
柔らかに、しなやかに揺れて。
私をさんざん惑わした。
もう近くにはいないけど。
同じ匂いを嗅ぐと甦ってくる。
「芙羽」
愛しくて何度も呼んだ名前。
久しぶりに声に出す。
「…芙羽」
もう近くにはいないけど。
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