恋愛談義

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「ないけど…でも実際はよく分かんない。」 じっと私を見つめる薫から目を逸らさずに言った。 揺るぎない視線が私にくる。 「頭では、分かってるよ?人を好きになるのって自由だもん。でも…」 視線に耐えられなくなって、私は再び突っ伏した。 「自分がそういう対象になると…びっくりする。ついつい相手を遠ざけてしまう。」 顔を横に向けて、私は薄暗い室に目をやった。 整然と並んだ机、椅子。 僅かに匂う薬品。 ケースに収められた様々な器具。 教室棟から離れているため、廊下を歩く足音も、誰かの話し声もしない。 「私はいいと思うけど?」 しばらくの間の後、呟くように薫が言った。
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