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カラカラカラ…
窓の開く音が微かに聞こえた。
そろそろ嗽するか…。
そう思った瞬間、部屋を区切る仕切りから顔が出てきた。
「こんばんは。」
「…」
何なんだ本当にこの女は。
呆気に取られ、じっと見つめた。
「ここ、あんまり外見えないんですね。」
不躾な視線を気にした風もなく、伊東は話し掛けてくる。
答えられるはずも、答える気もなく、部屋に戻ろうとした。
「あっ、あの!」
まだ何かあんの?
少々苛ついて、伊東を振り返った。
「秋留さん、今度近くを案内してもらえませんか?」
いきなり下の名前を呼ぶような馴々しい人間は、基本的に嫌いだ。
問い掛けに答えることなく、部屋に戻る。
伊東の呼び止める声は、完全に意識外に置いた。
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