隣の住人

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「友達いないの?」 「この近くには。」 「知り合いも?」 「男性の部屋には泊まれません。」 「…」 「お願いします。」 心の中で、舌打ちと悪態を繰り返しながら、渋々体を横にし、人が通れる隙間を空けた。 伊東の顔に輝きが戻る。 「…ありがとうございます!」 そう言って靴を脱ぎ、綺麗に並べてから廊下を歩く。 足取りの軽さが窺える。 …こっちの足取りの重さには気付かずに。 「部屋、シンプルなんですね。私のと作りが違う感じがします。」 人間との関係と同じように、物との関係も非常に淡泊だ。 必要な物しか部屋にはない。 殺風景とも言える部屋だ。
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