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タオルと着替えを持って、入れ替わりにバスルームに向かう。
熱をもった室内は暑い。
服を脱ぎながら、鏡で自分の体を見る。
白い体。
何の痕も残っていない体。
シャワーの水滴が体を滑る。
でもそれは、表面の汚れしか流さない。
歪んだ汚れや痛みの上を滑り流れることはない。
そんなものを消してくれる石鹸はないのに。
お風呂から上がると、部屋に伊東はいなかった。
出ていったのかと思えば、ベランダからシャカシャカと途切れ途切れの歯ブラシの音が聞こえた。
ベランダに立つと、伊東の上に影がかかり、伊東が振り返る。
「化粧水お借りしました。あと歯磨き粉も。マスカット味なんて変わってますね。」
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