隣の住人

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ベランダから離れて、洗面所に行く。 今夜もせめてもの自然を口で感じる。 部屋の電気を消して、再びベランダに向かう。 夜空は代わり映えのない矩形。 今夜は月も星もない。 向かいのマンションの窓の明かりは殆どない。 もう大人の時間だ。 先に伊東が嗽をし、それに続く。 ふと、コップの中に立つマスカット味の歯磨き粉を見る。 …そろそろ飽きてきた。 部屋に戻ると、伊東が壁にもたれて眠そうな顔をしていた。 それを横目に、寝室のベッドを整える。 「明日が休みで良かった…不動産屋に行かなきゃ。」 そう呟くのが聞こえた。 ベッドの右側に横たわる。 「電気消して。寝るから。」 「…はい。」 欠伸を噛み殺しながら、電気を消し、おとなしく左側に入ってくる。
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