思い出せない

7/20
前へ
/375ページ
次へ
部屋を出て、キッチンに向かう。 少し温かさが漂っていた。 テーブルの上には、オムレツとサラダの盛られた皿があり、コーヒーメーカーからは湯気が上がっていた。 少し呆然とした。 朝に弱い私に代わって、阿純はいつも朝食を用意してくれる。 私はそれに甘えるだけ。 なのに私は、二人の記念日すら覚えていない。 これでいい筈なんてない。 私は…薄情者だ。 食後、シンクに皿を置き、代わりに水切りからグラスをあげる。 水を入れ、隅のミニバラにかけようと向かう。 しかし、すでに土は濡れていて、水が十分にかけられていた。 あんな言ってたくせに、私が大切にしているものを、きちんと大切にしてくれる。 なのに私は阿純を大切にしていない。
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3153人が本棚に入れています
本棚に追加