思い出せない

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暫らくすると、キッチンの音が止んだ。 私は目を閉じ、ベッドにじっとしていた。 すると、阿純の足音が私の部屋へと近づいてくるのが聞こえた。 静かにドアが開く。 「…葵?寝てる?」 ひっそりとした声が聞こえ、阿純が入る気配がした。 私は寝たふりを決め込み、固く目を閉じた。 すると、ベッドに阿純が腰掛ける気配がした。 そして、布団を掛け直してくれた。 布団に手の重みが加わる。 ぽんぽんと、ゆっくり布団を叩く。 その手を今度は額に伸ばし、髪を軽く触った。 「…おやすみ。」 手が離れ、阿純が部屋から出ていく気配がした。 衣擦れの音は、ドアが閉まると同時になくなり、足音に変わった。
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