思い出せない

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私は薄らと目を開けて、その足音を聞いていた。 「ずるいよ…そんな優しさ。」 勝手に口から言葉が零れ、そして目から涙が零れた。 あんな優しい面があったなんて、忘れていた。 私はそんなことも覚えていなかった。 阿純が、ちくりとくる言葉を言ってるわけじゃない。 いらつかせることをしているわけじゃない。 全部私のせい。 勝手な被害妄想。 私が、阿純を理解していなかっただけ。 「…はぁー。」 流れる涙を軽く拭って、私は布団に潜り込んだ。 今夜、夢の中で泣くのはどっちだろう。 私だろうか。 阿純だろうか。 そんなことを考えている内に、私は眠りへと引き込まれた。
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