思い出せない

14/20
前へ
/375ページ
次へ
「今日?」 「そう。」 「…」 「覚えてるわけ、ないか。」 阿純はため息を吐きながらベッドからゆっくり抜け出した。 そして壁際の机に向かい、卓上カレンダーと堅い表紙の本を数冊持って、床に座った。 私はドアの前から動けずにいた。 「こっち座って、葵。」 阿純の言葉でようやく体が動き、床に座る。 阿純に目をやると、カレンダーを見つめていた。 よく見ると、今日の日付に赤く丸が付いていて、小さく書き込みがしてあった―。 《葵と 6年目》 今日、だった。 今日、で6年だった。 「6年目に振られるなんて、今までなんだったんだろうね。」
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3153人が本棚に入れています
本棚に追加