3153人が本棚に入れています
本棚に追加
「違う、阿純、さっきのは…」
「じゃあどうして、面と向かって言えないの。何で寝ている時に言うのよ!」
堰を切ったように、阿純が畳み掛ける。
でも、私の方を向くことはしない。
「目を見て言えないんでしょ。だから寝ている時に言うんでしょ…嫌いになったんなら、はっきりと言って!一人で逃げないで!そんなの…ずるいわよ。」
そこでようやく阿純が私を見た。
瞳に涙を湛えて。
頬を赤くして。
僅かに震えて。
「…ずるい、かぁ。」
私は辛くなって、ひっそりと呟いた。
その呟きを無視して、阿純が私の目の前に堅い表紙の本を突き出した。
最初のコメントを投稿しよう!