思い出せない

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「違う、阿純、さっきのは…」 「じゃあどうして、面と向かって言えないの。何で寝ている時に言うのよ!」 堰を切ったように、阿純が畳み掛ける。 でも、私の方を向くことはしない。 「目を見て言えないんでしょ。だから寝ている時に言うんでしょ…嫌いになったんなら、はっきりと言って!一人で逃げないで!そんなの…ずるいわよ。」 そこでようやく阿純が私を見た。 瞳に涙を湛えて。 頬を赤くして。 僅かに震えて。 「…ずるい、かぁ。」 私は辛くなって、ひっそりと呟いた。 その呟きを無視して、阿純が私の目の前に堅い表紙の本を突き出した。
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