思い出せない

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「これって…」 私は唖然として、その本を見つめた。 「こないだ、お母さんが来て、置いていったやつ。私は見ないと言ったのよ。でも…」 中を阿純が捲る。 大きく引き伸ばされた写真があって、優しい瞳の男性だった。 私はぼんやりと、ドラマと同じなんだな、と考えていた。 「こうなる前兆だったのよね。」 「阿純、あのね、」 「葵は誰がいいと思う?」 「阿純、」 「まぁどれども一緒かなぁ、あっこの人はないな。」 「阿純、ちょっと聞いて、」 「痩せてる方がいいなー。」 「阿純!」 大きめの声を出すと、阿純はびくんと体を震わせ、喋るのと捲るのを止めて、首を竦めた。 そして私を見た。
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