思い出せない

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「じゃあ私も早めに切り上げるよ。」 「場所は私が決めて、後で連絡するね。」 そこで阿純は立ち上がり、皿を片付けジャケットとバッグを手にした。 そして素早く私にキスした。 「じゃあお先。後でね。」 駆け足で玄関に向かい、ヒールを手際よく履いて出ていった。 あんな強引でしゃきしゃきした部分もあった。 やっぱり…好き。 にやける顔を手で隠しながら、グラスに水を入れ、隅のミニバラにかける。 「おっ。」 今日は6輪も咲いている。 優しくピンクの花弁を触る。 水と光と愛情で大きく育て。 私は満ち足りた気分になり、グラスを片付けて、着替えようと部屋に戻った。 今日はピンクのグロスをつけよう。
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