背中の爪の痕

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「…あっそ。」 「そ。」 私もベッドから下り、カバンを持ち、鏡を覗く。 「…なにめかしこんでんだか。」 横目で、真剣にチェックをする志帆を見る。 ふんっ。 「置いてくよ?」 部屋を出ながら、そう言い残して階段を下りる。 「ん、行く行く!」 慌てて鏡から離れ、カバンを持って追い掛けてくる。 私はすでに玄関でスニーカーを履いていた。 「お母さん、塾行ってくるー。」 「はぁい、頑張ってきなさい。理玖ちゃん、またおいでね。」 「お邪魔しましたー。」 「行ってきまーす。」 玄関から出て、近くのバス停に歩きだす。 志帆は履き損ねたスニーカーの爪先をとんとん地面にあてている。
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