背中の爪の痕

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「じゃあ公式覚えようかな。」 また負けじと数学の参考書をちらつかせる。 「んっ!嫌味ー!」 「ギャハハ」 そんな他愛もないじゃれ合いをしながら、バスに揺られて塾に向かった。 「何でテスト前にプールなんかすんの。空気読めよ、あの先生…」 友達の麗が不満を言う。 「別いいんじゃ?気分転換になるし。」 私は麗を宥めながら、並んで更衣室に入る。 すでに数名のクラスメイトが紺のスクール水着になり、きゃっきゃっとはしゃいでいた。 「私は理玖みたいに頭良くないの!」 ロッカーに荷物を置きながら私を睨む。 「…それにまた焼けるし。」
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