はんこのちから

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「これで終わりっと。」 そう言って、引き出しの中身を出した時だった。 コロコロコロ…‥ 「ん?」 丸い何かが転がり、床に落ちた。 屈んでそれを拾う。 「…あっ。」 黒っぽいそれは、先が少し赤くなっていた。 丸い感触が懐かしい。 向きを変えると、赤い部分には“安藤”と縦に彫られている。 「はんこだ…」 私は、そのはんこを持ったままベッドに寝転がり、天井を見つめた。 そして目をつぶる。 “安藤”の笑顔が、少しずつ浮かび上がってくる。 もう何年も会っていないけど、あの子は私を覚えているだろうか―。
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