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朝からの両親の小競り合いをかわし、大学に向かう瑞樹さんと共に家を出る。
行ってきます、なんて言葉は忘れた。
「雛、今日は講義も早くに終わるしアルバイトもないから、一緒に食事でも行かないか?」
家の裏手に停めている車に行きながら瑞樹さんが言った。
昨夜の雨のせいか、車体に葉が数枚ついていた。
彼は綺麗な指でそれを取り払う。
「…何もしなければいいですよ。」
助手席に乗り込み、シートベルトをはめながら答える。
運転席で小さく瑞樹さんが笑った。
「まだ怒ってる?ごめん、謝るよ。度が過ぎたね。」
ゆっくり車が進み出す。
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