アニマル・キス

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「でも、」 振動の殆どない車は、滑らかに道を走る。 「雛はいつも辛そうな顔をしているよ?」 私は何も言えずに、頑なに前を見ていた。 「家にいる時は、まぁしょうがないけど、でも昨夜は彼女のところから帰ってきたんだろう?」 瑞樹さんも前を見たまま続ける。 「雛は、幸せじゃないの?」 答えられない。 「彼女は、幸せを倍にできる存在じゃないの?」 「じゃあ、6時に迎えに来るから。」 高校の近くに車を寄せ、瑞樹さんは明るく言った。 私は軽く頷いて助手席から下りた。 「行ってらっしゃい、雛。」 閉まるドアの向こうから聞こえた声を背に、私は歩き出した。
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