アニマル・キス

17/27

3153人が本棚に入れています
本棚に追加
/375ページ
私はごくりと唾を飲み込んだ。 今、篠田先生は“先生”としてじゃなく、由寿の“兄”として話している。 しかし、気になる点もあった。 「…由寿、泣いていたんですか。」 私は膝上に置いた手をぎゅっと握り締めた。 「…昨夜遅くに俺が帰宅したら、薄く部屋の扉が開いててな。そこから嗚咽がしてきてたんだ。心配して声を掛けたけど、首を振るばかりで何も言わなかった。」 飲み干した湯呑みを持ち、篠田先生は流しに向かった。 私はその後ろ姿を目で追った。 水音がしてくる。 「昨日は来てたんだろう?」 「…はい。」
/375ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3153人が本棚に入れています
本棚に追加