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私はごくりと唾を飲み込んだ。
今、篠田先生は“先生”としてじゃなく、由寿の“兄”として話している。
しかし、気になる点もあった。
「…由寿、泣いていたんですか。」
私は膝上に置いた手をぎゅっと握り締めた。
「…昨夜遅くに俺が帰宅したら、薄く部屋の扉が開いててな。そこから嗚咽がしてきてたんだ。心配して声を掛けたけど、首を振るばかりで何も言わなかった。」
飲み干した湯呑みを持ち、篠田先生は流しに向かった。
私はその後ろ姿を目で追った。
水音がしてくる。
「昨日は来てたんだろう?」
「…はい。」
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