3153人が本棚に入れています
本棚に追加
/375ページ
「由寿と喧嘩でも?」
「いいえ…いつものように過ごしました。」
水音が止み、籠に上げられた湯呑みがカチャと音を立てた。
再び篠田先生が私の目の前に腰掛ける。
「由寿なぁ、」
よりくだけた口調で篠田先生が続ける。
「あいつ、不安なんだよ、春里がいないことが。」
「え?」
私を見つめてくる篠田先生の真っ黒な瞳を見つめ返す。
「春里…確かにあいつには性交の相手が数人いる。でも、あいつにとって春里は別格だと俺は思っている。言った通り、あいつは我儘だから自分の気に入ったものにしか興味を示さない。だから、余程所有欲のあるものにしか執念を見せないんだ。」
最初のコメントを投稿しよう!