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私は丸椅子から勢いよく立ち上がった。
「春里?」
篠田先生が驚いた表情で私を見上げた。
「篠田先生、私行かなくちゃ。私…私…」
気ばかりが急いてうまく言葉が出てこない。
「落ち着け春里。」
ふっと篠田先生が優しく微笑む。
その笑顔が由寿のそれと重なる。
「俺は春里があいつのことを大切に思っていてくれてるって分かってるよ。」
「はい。」
篠田先生が右手で私の左腕をぽんぽんと叩く。
「由寿を、よろしく。」
私は零れそうになる涙を堪えて、頷くことしかできなかった。
篠田先生はまた笑って、行けよと言った。
私は一礼して生物準備室から走り出た。
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